生殖医療

?来院時期について
?初診の予約方法
?不妊原因について
?不妊検査について
?タイミング指導
?人工授精
?生殖補助医療(体外受精)
?体外受精の適応
?当院における体外受精の対象夫婦(カップル)について
?STEP1)治療開始から採卵にいたるまで
?STEP2)受精から胚培養まで
?STEP3)胚移植について

不妊治療をお考えの方へ

来院時期について

不妊とは「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間(1年間)避妊することなく通常の性交を行っているにもかかわらず妊娠の成立をみない場合」と定義されています。しかし1年を待たなくても治療をお勧めする場合もあります。
当院は予約制のため、ご夫婦(カップル)でご相談の上、ご都合の良いタイミングで「生殖医療外来」のご予約をお願いいたします。

初診の予約方法について

当院の受診は原則として他の医療機関からの紹介状(診療情報提供書)が必要となります。詳細はこちらをご確認ください。

不妊原因について

不妊原因は女性のみならず男性も約48%関与しています。
そのため、男性も早々に検査をお勧めしております。
グラフ1

不妊検査について

不妊検査は月経周期に合わせて行う検査と、月経周期に関係なく可能な検査に分かれます。また保険適用検査と保険適用外検査に分かれます。詳細な内容については外来にてご説明いたします。
グラフ2
※抗ミュラー管ホルモンは生殖補助医療(体外受精)のみ保険適用です。

不妊治療法について

不妊治療は以下の3つに分けられます。

タイミング指導

超音波検査や尿検査、血液検査などを用いて排卵日を推定し、性交時期を指導する方法で、最も簡易的な方法です。

人工授精

超音波検査や尿検査、血液検査などを用いて排卵日を推定し、洗浄?濃縮したパートナーの精子を子宮内に注入する方法です。
主な対象として以下の4つがあります。
(ア)精子?精液の量的質的異常
精液検査として精液量?精子濃度?精子運動率の所見が基準値を下回る場合を指します。所見によっては最初から生殖補助医療をお勧めする場合や、男性不妊専門施設に紹介させていただく場合もあります。
(イ)射精障害?性交障害
勃起障害、射精障害などでタイミング指導ができない場合
(ウ)精子―頚管粘液不適合
フーナー検査(頚管粘液内の運動精子を確認する検査)の結果が不良の場合
(エ)機能性(原因不明)不妊
不妊原因検査を行なってもはっきりと断定できない場合、機能性(原因不明)不妊と診断します(年齢による卵巣機能低下や精子の質の低下も含まれます)
 



上記の2つの治療法は保険適用となっています。ただし、治療開始前にご夫婦(パートナー)の受診、検査が必要です。

生殖補助医療(体外受精)

生殖補助医療(体外受精)とは卵巣の中にある成熟した卵胞から卵子を採取し、精子と受精させる方法です。さらに受精した卵を培養?発育させ、子宮内に移植することで妊娠を期待する治療法です。
1978年世界で初めて体外受精児がイギリスで誕生し、以降本邦含め世界各国で体外受精治療が広く行われています。
具体的な内容については以下をご覧ください。

生殖補助医療(体外受精)について

生殖補助医療(Assisted reproductive technology; ART、いわゆる体外受精)は妊娠させるために卵子と精子、あるいは胚を取り扱うことを含む全ての治療法のことで、大きく分けて「体外受精?胚移植」「顕微授精」「配偶子ならびに胚凍結保存および融解胚移植」に分かれます。

生殖補助医療(体外受精)の適応

(ア)卵管性不妊

卵管は子宮の左右にある臓器で、体の中で受精するために非常に重要な役割をしています。卵巣から排卵する卵子をキャッチする役割があり、精子と出会い受精する場所でもあります。卵管の通過性が悪い場合や摘出後の場合、一般不妊治療では妊娠困難となるため適応となります。

(イ)男性不妊

自然妊娠するための必要な精液所見の基準を満たしていない場合、適応となります。ただし、無精子症(射出精液内に運動精子が全くみられない場合)は男性不妊専門施設に紹介させていただいております。

(ウ)機能性(原因不明)不妊

不妊原因検査を行なってもはっきりと断定できない場合があり、機能性不妊の診断となり(年齢による卵巣機能低下や精子の質の低下も含まれます)、人工授精の適応でもありますが、最初から体外受精を提案することもあります。

(エ)人工授精等の一般不妊治療で妊娠に至らなかった場合

タイミング指導や人工授精は比較的簡便な治療法ですが、妊娠率は10%程度と高くありません。そのため繰り返し行なっても妊娠に至らない場合は体外受精の適応となります。

当院における体外受精の対象夫婦(カップル)について

当院では以下の方を対象としております。
?法的婚姻関係にある夫婦
?法的婚姻関係にはないが、同居している(いわゆる事実婚)

法的婚姻関係になく、かつ同居していない場合は対象となりません。

体外受精を行う前に準備いただきたいもの

当院で体外受精治療を希望される場合、以下の書類が必要となります。書類の確認が出来次第、治療開始となります。

?戸籍謄本(全員)
 「全部事項証明」原本
 コピーおよび戸籍抄本は不可
 発行から3ヶ月以内
?住民票(法的婚姻関係がない方のみ)
 発行から3ヶ月以内
?顔写真付き公的身分証
 例)運転免許証、マイナンバーカード、顔写真付きの住民基本台帳、パスポート、在留カード
?ART同意書
?先進医療同意書

保険診療について

2022年4月より生殖補助医療は保険適用となっていますが年齢、治療回数、治療計画に条件があります。

年齢

初めての治療開始時点で女性年齢が43歳未満であること

治療回数の上限

1)40歳未満の場合:6回の胚移植
2)40歳以上43歳未満の場合:3回の胚移植
※治療回数は1子ごとにカウントされ、出産によりリセットされます。
※保険診療にて採卵したが移植可能な胚が得られなかった場合、治療回数は
カウントされません。

ご夫婦での治療計画

保険診療の初回周期はご夫婦(パートナー)の同席が必要です。
保険診療において体外受精は治療開始時に計画書を作成し、一連の治療をその計画に基づいて行う必要があります。一連の治療は採卵から胚移植まで含まれるため、その間に自費診療を併用することはできません。

体外受精治療の流れ

?STEP1)治療開始から採卵にいたるまで
?STEP2)受精から胚培養まで
?STEP3)胚移植について

STEP1)治療開始から採卵まで

①排卵誘発
月経開始より排卵誘発剤を用いて卵巣刺激を行い卵胞の発育を促します。
排卵誘発剤には内服と注射があり使用方法や使用量は年齢や卵巣予備能、治療
歴に応じて選択します。およそ7-10日間卵巣刺激を行い、超音波検査、血液検
査をもとに採卵日を決定します。

②採卵
採卵とは排卵直前の成熟卵胞の中から卵子を回収することです。
経腟超音波で確認しながら細い針を卵巣に穿刺し卵胞液を回収します。
胚培養士が卵胞液の中から卵子の確認を行います。
当院では局所麻酔もしくは静脈麻酔にて行ない、処置はおよそ10分程度で終了
します。採卵結果は当日説明します。

STEP2)受精から胚培養まで

◇受精方法(体外受精と顕微授精)
?体外受精(ふりかけ法)
ふりかけ法(Conventional IVF)とは、採卵によって体外に取り出された卵子と洗浄した精子を一定時間同じシャーレの中で合わせて、受精を促す方法です。
?顕微授精(Intracytoplasmic Sperm Injection; ICSI)
顕微授精とは卵子1個に対し精子1個を入れて受精させる方法です。ふりかけ法は精子の自然な力にまかせて受精させるのに対し、顕微授精は卵子の中に精子を注入するため、精子の力だけで受精しにくい症例に適応となります。

◇胚培養
上記の受精操作を行うと1-4時間で受精は完了し、受精卵(胚)は子宮?卵管と同じ環境に保たれたインキュベーター内で培養します。
胚の発育を観察するためにはインキュベーターから出して顕微鏡で観察するのが一般的ですが、その際に温度変化やpHの変化、光への暴露により胚がダメージを受けると言われています。近年タイムラプスインキュベーターの開発により、胚をインキュベーターから出さずに観察できるようになり、培養期間の2-6日間を安定した培養環境に置くことでより多くの良好胚を得られるようになりました。さらに気が付かれなかった微細な変化も観察できるようになることでより妊娠しやすい胚を選択できるようになりました。当院でもタイムラプスインキュベーターを導入し、より良い環境で胚培養を行っていく予定です。

◇胚凍結
胚が複数獲得できている場合、一部または全て凍結を行います。
胚の8割は水分のため、そのまま凍結すると氷晶が形成され胚を傷つけてしまいます。そこで凍結保護液を使って凍結する、ガラス化法という方法を用いることで安全に胚を凍結し、液体窒素中で長期的に保存することができます。

STEP3)胚移植について

胚を子宮の中に注入することを胚移植と呼びます。移植可能な胚ができましたら最適なタイミングで移植を行います。胚移植には新鮮胚移植と融解胚移植の2つのパターンがあります。また融解胚移植には自然排卵周期とホルモン補充周期がありますが詳細は担当医にご確認ください。移植当日は子宮の中に細いカテーテルを用いて胚を注入します。注入後10-14日後に血液検査にて着床(妊娠)判定を行います。

体外受精料金について(保険?自費)

料金について(保険診療の場合)

生殖補助医療管理料
750円(月1回)
抗ミュラー管ホルモン検査
1,800円

採卵費用

採卵術9,600円(卵子0個含)
以下採卵個数によって加算されます
卵子1個
2-5個
6-9個
10個以上
+7,200円
+10,800円
+16,500円
+21,600円

受精費用

体外受精12,600円
顕微授精

1個
2-5個
6-9個
10個以上


14,400円
20,400円
30,000円
38,400円
体外受精と顕微授精を同時に行った場合、体外受精の50%+顕微授精の費用となります。

受精卵培養費用

1個
2-5個
6-9個
10個以上
13,500円
18,000円
25,200円
31,500円
+胚盤胞培養加算
胚盤胞作成を目的とした場合、以下が加算されます
1個
2-5個
6-9個
10個以上
+4,500円
+6,000円
+7,500円
+9,000円

胚移植費用

新鮮胚移植
22,500円
凍結?融解胚移植
36,000円
以下は実施した場合に加算されます。
 アシステッドハッチング
 高濃度ヒアルロン酸含有培養液
+3,000円
+3,000円

胚凍結保存管理費用

胚凍結保存管理料(導入時)
1個
2-5個
6-9個
10個以上

15,000円
21,000円
30,600円
39,000円
胚凍結保存維持管理料(年に1回)10,500円

料金について(自費診療の場合)

採卵費用

採卵術 38,400円(卵子0個含)
以下採卵個数によって加算されます
卵子 1個
2-5個
6-9個
10個以上
+28,800円
+43,200円
+66,600円
+86,400円

受精費用

体外受精 50,400円
顕微授精

1個
2-5個
6-9個
10個以上


57,600円
81,600円
120,000円
153,600円
体外受精と顕微授精を同時に行った場合、体外受精の50%+顕微授精の費用となります。

受精卵培養費用

1個
2-5個
6-9個
10個以上
54,000円
72,000円
100,800円
126,000円
+胚盤胞培養