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多血小板血漿(Platelet-rich plasma:PRP)を用いた変形性関節症治療
PRPとは
PRPとは、Platelet-Rich Plasmaを略した名称です。日本語では多血小板血漿と呼ばれていて、血小板を濃縮したものを指しています。血液1mm3当りに10万~40万個含まれる血小板は、血管が損傷したとき損傷した場所に集まって止血をするのですが、その際に多量の成長因子を放出します。この成長因子には、組織修復のプロセスを開始する働きがあります。
PRP治療とは、PRPに含まれる成長因子(下に詳細を記します)の力を利用して、人が本来持っている治癒能力や組織修復能力?再生能力を最大限に引き出す治療です。長期間にわたる痛みの抑制効果だけでなく、成長因子による軟骨保護効果も期待できる他、ご自身の血液成分だけを用いた治療ですので、免疫反応が起きにくいという点も大きなメリットです。
一般的に1週間~6ヶ月で組織修復が起こり、治療後2週間~3ヶ月に効果の出現が期待できます。また、繰り返し治療を行うことも可能です。
1.目的
変形性関節症に対する内服、関節内注射、運動療法、物理的治療や手術等の外科的治療に代わる治療法として行います。2.内容
本治療法は、患者様ご自身から採血した血液から多血小板血漿(PRP)を抽出して関節部位の治療に利用するという方法です。ご自身の血液を使用するため身体に及ぼす負担が少なく、副作用が少ない治療法であり、副作用が懸念される非ステロイド性抗炎症剤の服用や、ステロイド剤やヒアルロン酸製剤の関節内注射、また、運動療法や温熱療法等の物理的治療、手術等の外科的治療に代わる治療法として、諸外国でも積極的に考案されています。本治療では、血小板に含まれる様々な成長因子が機能を発揮することで損傷した組織の再生(修復)および疼痛(鋭い痛み)の改善、さらに繰り返しPRP を投与することで、長期の鋭い痛みをコントロールする事が可能となることを期待しています。
PRPに含まれる抗炎症性物質と成長因子の働き
?血小板由来成長因子(PDGF-aa, PDGF-ab, PDGF-bb)
細胞の複製を刺激します。血管形成?上皮形成?肉芽組織形成を促進します。
?形質転換成長因子(TGF-β1, TGF-β2)
細胞外マトリックス形成を促進します。骨細胞の代謝を調節します。
?血管内皮成長因子(VEGF)
血管形成を促進します。
?線維芽細胞増殖因子(FGF)
内皮細胞および線維芽細胞の増殖を促進します。血管形成を刺激します。
治療の方法について
本治療では、人への治療に使用することが認められた医療機器である本治療専用の遠心分離機と専用チューブを用います。治療に使用するキットについては患者様とご相談、同意を得た上で決定を致します。【治療の流れ】
採血?PRP抽出?施術
すべての治療は当日中に完了します
PRPシステム
1.採 血:27mlまたは54mlの血液を採取します。
2.PRP分離:採取した血液を、人への治療に使用することが認められた医療機器である本治療専用の遠心分離機と専用キットを用いて遠心しPRPを精製抽出します。
3.施 術:患部へPRPを注入していきます。
血液採取後、投与までの間、患者様は待合室にてお待ちください。
※採血量は関節部位により選択致します。
治療後、約10分間は院内でお待ちください。
治療当日の激しい運動や飲酒、マッサージなど治療部位に刺激が加わるようなことはお控えください。また、治療部位の感染を防ぐため、当日の入浴はお控えください。
治療の効果とメリットについて
?患者様ご自身の血液を用いる為、感染やアレルギー反応などの副作用のリスクが極めて少ない治療法です。
?自己血液から簡便に調整ができ、日帰りでの処置が可能です。
?採血と注射で完了する治療なので、年齢の上限制限はありません。
?治療痕が残りにくく、何度でも治療を受けることができます。
?1回の投与で修復作用が効果的に働けば、痛みの軽減や機能改善に対する長期的な効果持続が期待
できます。
その他治療についての注意事項
患者様の体調が良くない場合や、採取した血液の状態によっては、PRPを分離できないことがあります。その際には、再度採血をさせていただく場合があります。また、本治療に使用する機器は定期的にメンテナンスを行っていますが、突然の不具合発生により、治療の日程やお時間を変更させていただくことがございますので、ご理解の程お願いいたします。
治療後は、必用に応じて1ヶ月後、3ヶ月後及び6ヶ月後に通院していただき、経過観察を行います。患者様の来院時に診察を行い、再生医療等によるものと考えられる疾病等の有無を確認し、診療記録に記載します。
3. 予測される危険性と合併症
?患者様ご自身の血液を使用するため体調や年齢などに左右され、場合によっては安定した効果が出にくいといった欠点があります。 (治療効果?効果の持続期間には個人差があります)
?施術時、患部への注入には痛みを伴うことがあります。
?機器の原材料に対するアレルギー及び他の反応
?血管損傷、血腫、神経損傷、傷の治癒遅延、採血に伴う感染症
?PRP投与部位での感染、蜂巣炎、痛み、炎症、紅斑、あざ、腫れ、知覚異常など
?血栓症
※注射による腫れ?痛み?熱感?内出血?感染などが生じる恐れもありますが、一時的なものです。
症状が強く出た場合はご相談ください。腫れや熱感を早く改善するためには、クーリング(冷やすこと)をお勧めいたします。
PRP療法に適さない患者さん
?感染症の治療中、または治療歴のある患者さん
?血圧や脈が不安定な患者さん
?血液疾患や血液に異常がある患者さん
4. PRP治療以外の治療について
今回行うPRP治療以外にも、現在次のような治療が行われています。?ヒアルロン酸投与
通常診療で最もよく使用される薬剤です。関節内にヒアルロン酸を注射することで、骨と関節軟骨間の潤滑剤としてはたらき、こすれ合う事を防ぎ、痛みを和らげる効果があります。しかし、ヒアルロン酸注入はヒアルロン酸が関節内から約3日で消失してしまう為、標準的な治療として1週間ごとに連続5回注入、その後は維持療法として月に2回の注射が必要となる事があります。ヒアルロン酸は医薬品として承認されており、安全性は高いですが、アレルギー反応などの可能性が完全には否定できません。
?ステロイド剤投与
抗炎症作用を期待して、ステロイド剤を用いた治療が通常診療で行われていますが、逆にステロイド剤の副作用で重篤な感染症の誘発?骨粗鬆症の増悪?薬剤離脱困難等が生じてしまう可能性があります。
?鎮痛薬の服用
炎症や痛みをコントロールするために使用されますが、鎮痛剤の服用による消化器系のダメージ、連用による効果減弱の可能性があります。
?手術による治療
?同意の撤回について?
説明を十分にご理解された上で、手術を受けるかご自身でご判断ください。実施前であれば同意はいつでも取り消せます。同意を撤回することで患者様に不利益が生じることはありません。
尚、血液加工途中および加工後で同意の撤回があった場合、加工時に発生した医療材料等の費用についてはキャンセル料として患者様のご負担となります。同意の撤回の後、再度本治療を希望される場合には、改めて説明を受け、同意することで本治療を受けることができます。
5. 治療にかかる費用について
この治療は公的保険の対象ではありませんので、当院の所定の施術料をお支払いいただきます。?治療費一例 … 片膝 300,000円(税抜) 、両膝 500,000円(税抜)
詳細やご不明な点は医師?スタッフまでお気軽にお尋ねください。
施術後、患者様の個人的な事情及び金銭等に関する問題に関しては一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
6. 治療に関する問合せ先
本治療に関して、治療後の不安、疾病等の相談などがございましたら担当医師または以下窓口までお気軽にご連絡ください。問合せ先:昭和大学江東豊洲病院 整形外科外来 TEL:03-6204-6240
ここに記載されている治療の経過や状態などはあくまで平均的なものであり、個人差があることをご了承ください。万一偶発的に緊急事態が起きた場合は、最善の処置を行います。
なお、治療に関して患者様が当院及び医師の指示に従っていただけない場合、当院は一切の責を負いかねますのでご了承ください。
詳細やご不明な点は医師?スタッフまでお気軽にお尋ねください。
施術後、患者様の個人的な事情及び金銭等に関する問題に関しては一切の責を負いかねますのでご了承ください。
この再生医療治療計画を審査した委員会
安全未来特定認定再生医療等委員会事務局
ホームページ https://www.saiseianzenmirai.org/
電話番号 044-281-6600
本治療は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成26 年11月25 日施行)」を遵守して
行います。また、上記法律に従い、認定再生医療等委員会(安全未来特定認定再生医療等委員会認定
番号:NA8160006)の意見を聴いた上、再生医療等提供計画(計画番号:)を厚生労働大臣に提出して
います。
7. 治療実施日
治療開始日:2022年1月15日(土)~第1、第3土曜日 完全予約制