脳卒中スクランブル体制について(脳血管センター) 

脳卒中、脳卒中スクランブル体制について

脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、急に脳の一部の働きが悪くなり、それによって身体の働きが悪くなる病気です。多くは前触れなく突然発症する点が特徴です。脳卒中の7割を占める 脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳に栄養が運ばれなくなった結果、脳が壊死してしまう病気です。 他に脳の血管が破れることで出血が起こり、脳組織が破壊される脳出血や、脳動脈瘤と呼ばれる血管に できたこぶが破裂することで、脳の表面に出血をきたすくも膜下出血があります。

超急性期の脳梗塞に対する治療法は、主にt-PA静注療法脳血管内治療があります。

t-PA静注療法とは血栓(血の塊)を強力に溶かす効果が期待できる薬を点滴によって全身に投与することで、血管を再開通させる方法です。tPA療法は比較的小さい血栓を溶かすのに適した治療法で、発症後 4.5時間以内にしか行えません。これは4.5時間以上経つと脳の血管がもろくなり、治療を受けることで 脳出血の危険性が高まり、症状を悪化させる可能性があるからです。

一方、脳血管内治療はt-PA療法が無効もしくは適応外の患者さんに活用できることから、死亡リスクの高い脳梗塞患者さんを救える治療法として期待されています。カテーテルという細い管を足の血管から 挿入して頭の中の脳の血管へ進め、血管を塞いでいる血栓を網目状の装置(写真①)でからめ取って回収したり、掃除機のホースのような直径2mmほどのカテーテル(写真②)を血栓まで誘導し吸引したりすることで、閉塞した血管を再開通させる方法です。この治療を行うことで、患者さんの予後(症状)が有意に改善したという研究結果が2015年以降多数報告されており、一定の条件を満たせば発症から6時間を 超えた場合でも、24時間まで血管内治療が有効の可能性があります。

img16
脳血管内治療が成功するためには様々な要素がありますが、その中でも最も重要な要素は時間です。 具体的には病院到着→画像診断→治療開始→再開通の流れの中で、可能な限り時間短縮を行うように工夫を重ねることが大切で、わずかな時間短縮の積み重ねが良好な治療結果に繋がります。当センターでは、病院到着から治療開始までできるだけ迅速に行うよう、医師、放射線技師、看護師、検査科、事務員と 多職種によるチームで時間短縮に取り組んでいます。2022年は22例の患者さんに血栓回収療法を行い、 病院到着から治療開始まで平均50分(SNIS 推奨は60分以内)、3ヶ月後介助なく自立している割合は23%でした。

脳卒中になった時に、後遺症を最小限にするためにはできるだけ早く病院に到着することが大切です。当院では搬送されてから40分以内の治療開始を目標にした『脳卒中スクランブル体制』を整えています。脳卒中の典型的な症状である、

img27①顔がゆがむ
img29②腕が上がらない
img31③言葉が出てこない
img33
といった症状が突然出現した場合は「様子をみてから」などとためらうことなく、急いで(Time)救急車を呼んでください

(2023.5掲載)