薬学研究科概要

研究科長あいさつ

大学院 薬学研究科長 野部 浩司大学院 薬学研究科長 野部 浩司

薬剤師に対する社会のニーズは近年ますます多様化しています。それは、薬剤師としての活躍の場が増えることを意味します。一方、これまでの薬剤師にとって主要な業務であった“薬剤の調合?分包、情報管理”などが次々と人工知能やロボットに置き換えられています。薬剤師が従来のように薬剤師免許を所有してルーチンワークをこなすだけでは、世の中の流れに埋没してしまうことが危惧されます。つまり、近未来の薬剤師は他の医療職や人工知能などに置き換えることができない“代え難い存在”となることが強く求められているのです。そのような“代え難い存在”となるための一つの答えが、私たち「昭和大学 大学院 薬学研究科」にあります。

薬学研究科では、医療における様々な分野において、「問題点を自ら発掘」し、それを「解析?研究」して「解決策を見いだす」ことのできる人材育成を目指しています。その実現のために、昭和大学が世界に誇る「医系総合大学」としてのチーム医療教育を基盤とし、個々の大学院生に対応した様々なコース、カリキュラムを用意しています。これらの中には、医学、歯学、保健医療学の各研究科との共同研究や、附属病院での臨床研究、新薬開発研究などの昭和大学大学院でしか成し得ない多くの学びの機会が含まれます。そして、これらにより高い研究能力と総合的な人間力を有する薬物の専門家、“博士(薬学)”を育成してゆきます。

私たちは、大学院薬学研究科で学んだ修了生が、それぞれの分野のプロフェッショナルとして“代え難い存在”となり、医療や社会をより良い方向に導くリーダーとなることを期待し、可能な限りの指導とサポートを続けています。ぜひ、私どもの元で自分自身の将来を創造する原動力を手にしてください。

研究テーマ

イリノテカン塩酸塩と殺細胞性抗がん薬の併用はコリン作動性症候群のリスク因子である

EGFR T790M遺伝子変異を発現した肺腺癌細胞株における第3世代EGFR-TKIへの獲得耐性機序の検討

高齢者の薬剤に起因する事故?損傷のリスクはポリファーマシーより特定の薬剤による治療である~医薬品副作用データベース(JADER)による解析より~

新規カテキン誘導体の接触皮膚炎に対する抗炎症効果

新規カテキン誘導体の接触皮膚炎に対する抗炎症効果

ビタミンEコーティングされたダイアライザーは酸化ストレスを阻害する

血流感染症の疫学と30日死亡のリスク因子の検討:日本での単施設後ろ向き研究

カンナビジオールの吸収改善を目的とした新規ナノエマルション製剤開発

ビルダグリプチンとメトホルミンの単剤併用から配合剤への切り替えによるHbAlc改善効果


研究生?教員メッセージ

中野 恵理子さん 薬学研究科
テーマを追求する研究者のマインドは、臨床にも生かしたい。

中野 恵理子さん 薬学研究科 4年次 医薬品評価薬学

私の研究テーマは「新規カテキン誘導体のかぶれに対する抗炎症効果」です。もともとカテキンのアレルギー反応への効能に興味があり、医薬品評価薬学部門で接触皮膚炎の研究がされていたことと、身近に起こるアレルギー反応についての知見は臨床現場でも役立つと思ったことがテーマの決め手です。研究フローとしては、マウスの耳に炎症をおこし、そこへカテキンと3種類の新規カテキン誘導体を塗布し、耳の組織からDNAを抽出し、炎症時に増える物質の数値を測りました。新規カテキン誘導体は薬品製造化学部門で製造したものを使い、その抗酸化能の測定は生体分析化学部門で行うなど他教室と連携して研究しました。
研究は自ら動かないと進捗しない大変さはありますが、1つのテーマを突き詰められる良い機会です。修了後は病棟薬剤師として勤めますが、患者さんへの最適な処方を考える際など、研究者のマインドは現場でも持ち続けます。

篠内 良介さん 薬学研究科


実験立案に時間をかけることで、研究マネージメント力の重要性を実感。

篠内 良介さん 薬学研究科 2年次 薬理学

私の研究テーマは、糖尿病によって引き起こされる手足のしびれや痛みを伴う神経障害の治療薬開発です。このテーマは、私が足彩胜负彩の臨床研修薬剤師(旧薬剤師レジデント)として勤務した際に、糖尿病神経障害の患者さんを担当した経験によります。治療法の乏しい神経障害の新規治療薬の発見は、患者さんへの大きな貢献となると考え、大学病院を辞めて大学院に入学しました。
私が所属する医?歯?薬学の薬理系研究室の集合体である「薬理科学研究センター」での研究開始にあたっては、神経障害モデルマウスの作成から着手し、その症状を評価する方法を見いだすのに多くの時間を費やしました。この中で、様々な専門領域の先生方から、自分の発想にはなかったアドバイスをいただき、そこから新たな発想が浮び、問題を解決できた時には、達成感を感じました。現在は、神経障害モデルを用いて医薬品の候補となる物質について検討を進めており、ひとつひとつの成果が患者さんへ繋がっていることを実感しています。

感染制御薬学 石野 敬子教授
日本初のAST※と の連携のもと、抗菌薬の正しい使い方を追求。
感染制御薬学は、医療の未来に大きな意義を持つ分野。

感染制御薬学 石野 敬子教授

当部門では抗菌薬の適正使用に関する研究を行っています。抗菌薬はそれぞれ特徴が異なり用法用量や患者の状態によっても効果が大きく変わります。近年新薬が開発されない傾向にある中、既存の抗菌薬でいかに治療していくかは重要なテーマ。そのケースに応じた適切な使い方を附属病院の感染管理部門と連携し研究しています。昭和大学は日本で初めてAST※を組織したこともあり、多職種間で連携して患者?耐性菌を把握する体制が整っており、本学で感染制御の研究をする大きなメリットと言えます。学部では知識と技術の吸収が主ですが、自身のテーマを徹底的に調べ議論し、研究フローそのものから組むのが院生生活。クリニカルクエスチョンを掲げられ、それを解決し現場