キャリアパス支援型周産期医療環境整備
名称
キャリアパス支援型周産期医療環境整備期間
平成21年度~平成25年度(5年間)概要
危機に瀕する周産期医療を立て直すためには、産婦人科医?新生児科医の確保が喫緊の課題である。しかし、現在の周産期医療は、昼夜の別なくリスクの高い過酷な勤務が要求され、若手医師にとって魅力のある勤務環境とはいえない状況である。そこで、目に見える形で、産科医?新生児科医の負担を軽減し、知的な好奇心をも満たせるような医療環境?医療システムを樹立することが、若手産科医?新生児科医の継続的な確保のために重要と考える。
今回のプログラムでは、
- 若手医師の教育環境の整備
- 女性医師の勤務継続?復帰を支援するシステムの整備
- 医師の負担を軽減するシステム構築
- 地域の周産期医療提供システムの向上
目的
人材確保においては、医学生?研修医に周産期医療の魅力を感じてもらうことが最も重要である。そのため、産婦人科では、一人の学生?研修医に、一人の専門医を張り付け医療に関わる実践的な教育方法をとっている。さらに、毎月、学生?研修医の症例発表会を開催し、研修成果や周産期医療について感じたことを一人30分以上をかけて発表する機会を与えている。このような取り組みにより、産婦人科を専攻する医師を毎年10人前後確保できる状況が4年続くなど一定の成果がでている。小児科においては、学生実習専任の助教をおき、きめ細かな指導体制をとるとともに、研修医に対して将来産婦人科や小児科を希望する者にはNICUでの研修を積極的に導入している。その結果、2009年度には7名の入局者(大学院3名)を確保できるようになった。また、これら入局者の小児科専門教育では、最低6ヶ月間のNICU勤務を義務付けている。
その他、卒前教育においては、小児科と産婦人科が連続して実習できるようなプログラムを作成している。
周産期医療の問題としては、
- 昼夜を問わない分娩やハイリスク分娩?ハイリスク新生児に対応する長時間連続勤務体制を、少ない数の医師が自己犠牲の下で支えているという現実
- 分娩の安全神話と周産期医療の現実との乖離によるクレームや訴訟の問題
- 分娩取り扱い施設の減少による大病院での分娩数の激増とNICU入院新生児数の激増
- 大学病院内では非正規雇用の医師が多く存在していること
- 若手産婦人科医?小児科医の中の女性医師比率が急速に上昇していることなどが挙げられる。
このような中、医師確保が安定化しつつあり、ある程度充足してきている現段階で、これらの問題を具体的に解決するため、以下の取組みを開始している。
- 夜勤性導入で、夜勤を行った医師が翌日勤務しないシステムを開始
- 昭和大学附属3病院を含む20の連携病院と一体となった産婦人科医の教育体制の整備と地域の周産期医療への貢献
- 昭和大学附属4病院小児科および関連病院が一体となった小児科?新生児医学教育体制の整備と地域医療への貢献
- 大学病院への患者増加に対応した地域連携促進のための研究会の開催(品川地区産婦人科臨床研究会、城南地区産婦人科臨床研究会、周産期管理研究会、城南新生児研究会、品川荏原小児科医会、昭和大学小児科医会など)
- 女性医師の増加に対応し、産休、育児休暇の取り決めの明確化
- 保育施設を持つ医療機関との連携
- 各段階の医師がキャリアアップしていくため、目的意識を持って医療に従事するための目標?課題の設定
- 医師?助産師の事務的な作業負担軽減のための妊婦管理のコンピューターシステムの開発とその運用
- 地域の周産期体制を守るため分娩休止に追い込まれた近隣病院への産科医の派遣?分娩再開
- 新生児集中治療室の増床による総合周産期センターとしての許容力の増強
- 母体救命対応総合周産期母子センター(東京都指定)としての周産期救急への対応力の増強
- 新生児蘇生法の普及のための講習会の開催